岡本大夢さん 叡啓大学職員
まずはやりたいことをやるべきです。
そうすれば人生を最大限楽しむことができます。
日本では未だに一つの会社に長く勤めようという安定志向が好まれる傾向がある。しかし「興味があること」「やりたいこと」を追及してこそ、後悔のない人生を送ることができるのではないだろうか。
岡本大夢さんはこれまでに4つの仕事を経験している。大学卒業後すぐに青年海外協力隊員としてウガンダで活動したのち、ナイロビで働き、その後日本の鉄鋼メーカーでの勤務を経て、広島県にある叡啓大学の立ち上げに携わった。何をきっかけに国際協力の道に進み、何を得たのだろうか。これまでの経験はどのように彼の今の生き方に生かされているのか。そして、働く中で彼が一番大事にしていることは何なのだろうか。2022年1月のインタビューで、彼の情熱、国際協力に対する姿勢、アフリカでの経験、そして彼の理想の働き方に迫った。
記事執筆者:奥野美優、トリニティ・カナム、デビッド・ウェルズ
インタビュー日:2022年1月
国際協力とのかかわり
ー国際協力に興味を持ったきっかけはなんですか。
私が生まれ育った広島は、被爆地の1つです。昔から平和に貢献する方法はあるだろうか、と国際協力のあり方を考えてきました。平和構築、農村開発、保健医療、教育などの技術協力や経済協力などいろいろありますが、私は高校生の時から平和構築の分野に行きたいと思っていました。
ーいつから国際協力にかかわる仕事をしたいと思い始めたのですか。
私は子どもの頃パイロットになりたかったこともあり、昔から世界で仕事をしたかったんです。実際に国際協力の仕事に携わりたいと思ったのは高校3年生のときですね。
また、中高生の時に青少年赤十字(JRC)に参加していました。 この活動で赤十字の精神を学び、どのように紛争が発生するのか、予防できるのか知りたいと思うようになったんですよね。その時から国際協力、特に平和構築に携わりたいと思い始めました。
ウガンダでの活動
〈青年海外協力隊について〉
岡本さんがウガンダに行くことになった「青年海外協力隊※」とは、JICA(独立行政法人国際協力機構)による、発展途上国の国づくりに貢献できる人材を現地に派遣するプロジェクトです。(※現在は「JICA海外協力隊」)
ーウガンダでの活動で一番印象に残ったことは何でしたか。
人々は1日1ドル未満で生活する経済レベルで暮らしています。でも、誰もが親切で笑顔がたくさんあります。子どもたちも可愛いんです。だから、最も記憶に残っているのは地元の人々との関係ですかね。今でもウガンダの人たちとはよくメッセンジャーで連絡を取っています。
写真:ウガンダ人の子どもたちの笑顔
ー大学での国際関係についての勉強は現地での活動に生かされましたか。
大学にいる間は、勉強したことが現場での活動に直接役立つと思っていました。でも国際協力で最も重要なことは、現実に現場で今起こっていることに向き合うことです。例えばウガンダでの最初のプロジェクトは、農産物を加工して付加価値を付け、それを市場に卸売りして現金収入を増やす方法に関するものでした。ドライフルーツは長持ちするので市場価値がより高く、収入が増えると予想していました。でも現地に行って見てみると、フレッシュな果物の方がジューシーでおいしいんですよね。そのままで安くて美味しいものをなんで乾燥させて高く売らなきゃいけないのかと思って。ドライフルーツは現地の人からすると高くて美味しくなくなったものですからね。だからそのアプローチはウガンダではある意味失敗だったんです。
ープロジェクトの中で地元の人々が蜂蜜を生産して収入を得るのを手伝ったそうですね。具体的にはどんなことをしたんですか?
青年海外協力隊のプロジェクトには専門性を持っていてその専門性を発揮する人と、マネジメントをする人の2種類があるんですけど、私はマネジメントの方だったんです。私が属されていたウガンダの県庁にはマーケティングの専門家や獣医さんや昆虫学者などいろんな専門家がいて、その人たちと一緒に元々現地の特産品であった養蜂を再び盛り上げるために何をしたらいいかというアイディアを出し合いました。県庁としてどういうサービスを農民に対してするのか、蜂蜜作りを通してどのような農村開発ができるか、という議論をしました。実際に簿記などのマーケティングに関することや養蜂の基礎知識に関するワークショップをやったり、巣箱を木から作ったりしましたね。このビジネスは成功して、地域活性化にもつながり、現地の人々の現金収入は格段に向上しました。現在その蜂蜜はイギリスなど海外へも輸出されています。
ーウガンダでの生活はどんな感じでしたか。
ウガンダでは時間の感覚が日本と違って、スケジュールがほぼ無いようなものなのです。期待すると裏切られてがっかりしちゃうので、期待はしていませんでした。よく「expect(期待)じゃなくてanticipate(予想)しよう」って言ってました。
朝日が昇ったら起きて、日が沈んだら眠り、ドラム缶で露天風呂を作ることもあるというすごく自然な生活でした。休みの日は庭でコーヒーを飲みながら読書をしたり、サファリに行ったりしました。僕の住んでいたところは車で30分も移動すればゾウがいるような場所だったので。ウガンダは電気の供給など、日本に比べたら足りないものがたくさんありましたが、空はとても澄んでいて、夜は星がとてもきれいでした。
写真:ウガンダの夜空
ーウガンダの人の働き方で、日本人と違うなと思われたところはありましたか。
中央政府の人は日本人とほぼ同じ感覚で仕事をしています。でも村に行くと、多くの人々はお金を稼ぐためではなく、食べるものを確保するために働いているんですよね。 農作物を栽培したり、牧畜をしたりしていました。
―ウガンダに滞在して気付いた、海外に住む上で大事なことはなんでしょうか。
まず、病気にならないことと、病気になりそうだったらリスクを知っておくことが大切です。他の国では、その国の薬をもらうのが一番かもしれません。日本から風邪薬を持って行ったんですけど、風邪っぽいなと思って風邪薬を飲んでも効かないんですよ。だからやっぱりウイルスが違うんだろうなと思います。
食事に関しては、大きく違うかもしれません。例えば日本ではお米が主食ですが、ウガンダではお米はとても高く、現地の人々は日常的に食べられるものではなかったです。
写真:ウガンダの代表的な食事。豆、トウモロコシ、米、バナナ、かぼちゃなどが入っています。
UNDPナイロビにて
〈UNDPとは〉
UNDP(国連開発計画)は、貧困の根絶や不平等の是正、持続可能な開発を促進する国連の主要な開発支援機関です。
―ナイロビでのお仕事は何をしていましたか。
ウガンダで行っていたマーケティングを意識した農業振興を通じた現金収入を増やすためのプロジェクトの企画をしました。東アフリカ全体で知識や経験を共有して、タンザニアやルワンダとかエチオピアなどの他の国でプロジェクトを立ち上げることがその当時求められていて。ナイロビでは、プロジェクトの企画や立案をしました。
―他の東アフリカで活動されて、それぞれの国の違いなどは感じましたか。
一番大きく違うのは国民の政府に対する意識だと思います。例えば、大統領を尊敬しているかとか政府を尊敬しているか。「この大統領がすごくいいからついていこう」という国民性もあれば、「ここは汚職がすごいからもう任せてもダメだ」という雰囲気の国もある。政府を信用していない国で政府主導の活動をやってもあまり意味がないんですよね。
日本の鉄鋼メーカーでのお仕事
―なぜ日本の鉄鋼メーカーに転職したんですか。
二国間や多国間での開発援助ではなく、日本の民間企業(プライベートセクターの経済活動)を通じた国際協力をやりたくて転職しました。日本だけじゃなくて世界の経済レベルを上げるために貢献している会社です。そこで、都市開発や経済活動には欠かせない産業の米と呼ばれる鉄を作る仕事をしました。
ー日本の仕事で大変だったことはなんですか。
一番はタスク管理ですね。1日にやらなきゃいけないことが複数あって、それをどう優先順位をつけてやっていくかっていう。しかも自分一人でやる仕事じゃなくてチームでやる仕事や取引先のパートナーも関係するものなので。アフリカでの経験と比較すると、スケジュールやタスクをどう管理するかというのが日本では結構大変ですね。
叡啓大学で働き始めて
ーなぜ大学で働こうと思ったんですか。
私がこれまで国際協力とか海外ビジネスのフィールドで経験したことや自分の考えを、これからの時代に世界に羽ばたいていく人たちに少しでも共有できたらうれしいな、と思って大学で働くことにしました。これまで働いてきて一番痛感したのは、いろんな人に助けてもらったしチームで動くことが大切だなと思ったことです。それは裏を返せば自分一人でやれることってかなり限られている、ということなんですよね。自分が現場にコミットするってことももちろんやりたいことではあるけど、今までの経験を少しでも伝えたいと思ったんです。叡啓大学のみならず、他の大学生のためにも貢献できるとうれしいですね。
ー今大学では何のお仕事をしていますか。
色々なことをやっているんですが、一つあげるとすると、他の大学と提携して来年から始まる交換留学のプログラムを準備しています。新しい大学ということもあるし、コロナの状況もあって予想もしてなかったことがたくさん起きるんですよね。そういう時に今までの経験を生かして、自分がどうやって動いたらいいかな、と頭でいろいろイメージしながら仕事に向き合っていくことができています。この習慣は非常に役に立っていますね。
今後の目標、アドバイス
―短期的な目標と長期的な目標を教えてください。
短期的な目標としては、今働いている大学を日本や世界でしっかりと認知されるものにしていきたいなと思います。そのためにもっとアピールしたいし、大学の内容を濃いものにしていきたい。自分の今までの経験も余すことなくつぎ込んでいきたいと思っています。
長期的な目標としては、ウガンダでビジネスをやりたいんですよね。そのために今ウガンダの人たちと色々話をしてて。何かしらのビジネスを通してウガンダの経済発展に貢献できるようなことができたらいいなと思ったんです。
―仕事をやめるまでに達成したいことはなんですか。
叡啓大学の学生の皆さんが活躍しているのを見るのが嬉しいですね。ビジネスでも国際協力でも、分野を問わず「学生さんすごく活躍してますよー」と聞けるようになりたいなと思います。
―これまでお仕事をしてきて、「もっとこうすればよかった」という後悔はありますか。
したい選択をしてきたので、あまり自分自身に後悔はないです。強いて言えば、もう一回大学院に行ってマーケティングの勉強をしたいかな。
―やりたいことや興味のあることはどのようにして見つければいいですか。
興味があることは、まずはなんでも調べていました。でも自分で調べることって限界があるんですよ。でもいろんな人脈を作って教えてもらうことって限界がないんですよね。どんどん人とのつながりを作っていくと教えてもらえることはたくさんあるので。Know-howには限界があるけど、Know-whoには限界がないと考えているんです。いろんな所に顔を出して、少しでも興味があったら参加してみるのがいいと思います。僕自身も大学時代に知り合った人に今でも何かあると相談してるんです。人脈を広げることは自分がやりたいことを見つけることの足がかりになると思います。
―今の若者へのアドバイスはありますか。
やりたいことをやるというのが一番だと思います。仕事でも勉強でもやっぱりやりたいことを、楽しんでやるということが一番だし。楽しんで勉強や仕事とかしていると周りが見ていて「あ、この人を応援したいな」とか「サポートしたいな」っていう風に思ってくるんです。だから何事も楽しんでやってほしいです。
筆者のプロフィール
奥野美優 | インタビューする前、私は青年海外協力隊のような国際的なボランティアと日本での仕事は丸っきり違うものであり、岡本さんがご経験されてきた様々な仕事につながりはあるのか疑問に思っていました。しかしインタビューを通して、岡本さんがアフリカでの活動の際に大事にしてきた現地の人とのつながりや臨機応変な対応はアフリカでの活動固有のものではなく、どこで働くにしても重要なことだと知りました。 転職をすることや海外でボランティアをすることは不安定だと思っていましたが、仕事が変わっても岡本さんがそれまでの経験を生かして活躍されていることを知り、私も自分の興味を追っていけたら、と考えるようになりました。私もこれから悔いなく生きていくために、岡本さんにもらったアドバイスをしっかりと心に留めておきたいです。 |
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トリニティ・カナム トリと呼んで下さい! | 私が岡本大夢さんのインタビューで感銘を受けたのは、岡本さんが「世界平和に影響を与えたい」「世界平和を築きたい」と考えていることです。彼は高校時代後半から、人の役に立ちたいと考えていたようで、とても感動しました。岡本さんはやる気があって、かつリラックスしているところが素晴らしい。また、岡本さんの働き方やワークライフバランスについても学ぶことができました。今どき珍しく、仕事を家に持ち帰らないそうです。 岡本さんは海外生活の経験が豊富で (例えば、ウガンダ)、私たちのグループにたくさんのアドバイスをしてくれました。主に、人生で期待するよりも予想するのが一番です。私は海外生活を希望している人間なので、岡本さんのアドバイスはとても参考になると思いました。 海外生活での食事や健康管理・医療は怖いものですが、いくつかの課題を知っておくと便利です。 いつか私が海外に出て、自分の夢・情熱・目標に向かうとき、私もやる気・リラックス・成功を手に入れられるようにしたいです。人生には困難がつきものですが、岡本さんのアドバイスをもとに、ベストを尽くしたいと思っています。 |
デビッド・ウェルズ | 岡本大夢さんはまだ若いですが、人生で多くのことを成し遂げてきました。彼へのインタビューの経験を通して、私はいくつかの貴重なアイデアを学びました。 岡本さんは国際協力への情熱を追求するためにアフリカで働くのが大好きでした。岡本さんは人生を最大限に活用できるように自分の情熱に従うようにアドバイスしてくれました。働いているか勉強しているかにかかわらず、自分がしていることを楽しむべきです。それは自身の全体的な幸福にとって非常に重要です。近年、岡本さんは若い学生たちと自分の考えや経験を共有したいと思ったので、大学で働くことにしました。大学生や他の若者は私たちのコミュニティの未来であり、私たちが住む世界に大きな影響を与えるでしょう。 しかし、一人でできることには限界があります。岡本さんは私たちが多くの人々とつながり、協力するべきだと提案しました。チームとして働くことで、私たちはより多くを達成することができます。 岡本さんにインタビューすることで、自分の目標、興味、情熱、そして人生全般について考える機会がありました。私は引き続き語学学習に興味を持っていきたいです。また、旅行への情熱を追求し、ニュージーランドと日本の間の国際ビジネスを促進することを決意しています。難しいかもしれませんが、岡本さんのインタビューでおっしゃったように、興味のあることに取り組み、後悔のない生活を送るべきです。 |
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