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瀬尾達也さん 秋田県立秋田西高等学校

職に就いて、それを通じてどう社会貢献するかを

考えるのが最終目標だからね。


 

瀬尾達也先生は三年前から秋田西高校で英語を教えており、今は国際教養大学専門職大学院で言語教育について学んでいる。瀬尾先生とお話していくうちに、先生の優しさ、誠実さがわかってくる。しかし、どうして瀬尾先生は教師になったのか?生徒の時にどんな生徒だったのか?どうして、他の場所でなく秋田で働きたいのか?このインタビューを通して、我々は先生から教師という職業の生き方、働き方について数多く学んだ。読者の皆さんにも、瀬尾先生からもらったアドバイスを共有できればと思っている。

記事執筆者:フィービ・スタツ、邱宇涵(ケビン)、川竹陽太

インタビュー日:2021年1月

 

自分のことについて


―子供の時の夢は何でしたか。


中学校になって、教師になりたいなって思い始めました。それまでは、あまり明確な目標とか夢とかなかったです。



―なぜ中学で、教師になりたいと思い始めましたか。きっかけなどはありましたか。


昔、ちょっと荒れてた時期がありました。髪を染めたり、耳にピアスを開けたりとか、いわゆる素行不良の時代があったんですね。でも、そうやってちょっと迷惑掛けたり、担任の若い女の先生に口答えしたり、態度で反抗したりしたのに、見捨てられなかったというのもあります。すごい感謝してるっていうのもあるし、それを将来の生徒に対して恩返しできればいいなって思ったのがきっかけですね。


これはちょっといい面の話ですが、反発心もありました。高校入試で、推薦を受けようと思ったんですよ。ある高校に推薦をお願いしたんですけど、聞こえちゃったんですよね。「瀬尾、受かるわけねえべ」みたいなこと先生を言ってたんですよ。それを聞いて、そういうふうに思われいたんだと思っていました。自分がそういうふうにしてたからしょうがないんですけど、そう言われちゃったら俺も黙ってないよと思ってました。じゃあ、もうそこに受かって俺は教師になってやるよって思ったっていうのがきっかけです。なので、そういういい面と、あと反発心と、両方ありました。



―週末や暇な時間は普段何をされてますか。


現場にいるときは、週末は部活動で全部時間がつぶされてしまうので、もっぱら生徒と一緒にサッカーをして、あと毎週リーグ戦があるので、リーグ戦に引率して行ったりとか。それで週末は消えてしまいます。今は土日、部活も外れてるので、妻と子どもが出掛けてる間に家やお風呂の掃除をしたり、家のメンテナンスをしたりしています。



―掃除をよくされているということですけど掃除はお好きなんですか。


いや。好きではないんですが、妻が子どもを見ている間にしかできないんで。


そうやってお互いに子育てを手伝うような関係なので、できるときにできる仕事をするっていう感じですね。やっぱり日本だと、どうしても女性が家庭に入って男性は働くっていうステレオタイプが残ってはいるんですけど、自分自身があんまりそういうのが好きじゃないんです。海外に留学したときにそういう家庭を見なかったっていうのもあるし、女性も、妻も働いてるので、なのでお互いに同じ状況にあるのに、妻ばっかりに子育ての仕事が偏ってしまうのはちょっとどうかなって。対等な関係でいたいという思いもあって。妻が子どもを産むところを目の前で見てるし、妻がいないとき、自分が息子を見ていたので、自分も寝る時間ないし、それを妻一人に押し付けるのはちょっとなと思います。




教師の働き方


―教師について好きなこと、嫌いなことは何でしょうか。


好きなことは常に若い子どもたちと一緒にいられるから、自分も若くいられることですね。時々の時代の流行とか若者が好きなものとかに敏感になれる。その時代に付いていってる感じがします。部活動で一緒に生徒と動いているので、身体的にも若々しくいられるかなとは思います。


辛いことは、勤務時間が長い。本当は短いっていうか、本当は決まってるんですけど、もう、あってないようなものになってるので。午後5時までが勤務時間ですけど、実際、部活動はまだ続いてるので帰れないから、大体帰るのは7時か8時です。


そして休みがないことですね。土日も部活動で全部潰れています。つまり週7日勤務。休みを取らないまま次の週を迎えるというのがつらいかなと思います。



―教師はどうして忙しいと思いますか。


色々な原因がありますね。部活動は放課後の時間を奪いますし。保護者の対応もあります。保護者が突然学校に訪問して話をしたりします。


あとは生徒対応が増えていますね。いろんな悩みを抱えている生徒がいる。生徒も友達関係とか保護者との関係とかいろんな悩みを抱えています。大学に行きたいのに親が働いていなくて悩んでる子もいます。友達と喧嘩してしまって、勉強に手がつかないとかもありますね。



―そういう対応は先生として必要な仕事だと思いますか。


生徒が授業に集中できないという相談は仕事のうちの1つだと思います。でも、週末の試合のサッカーの審判とかは先生の仕事って感じではないですね。何でも屋って感じです。



―秋田で働いていることは、家族と関係がありますか。


自分の親が秋田にいたので親のすぐそばに居たいとは思っています。北海道の大学に通っていたので、大学を卒業するときに、札幌で勤めることも考えたんですけど、姉が2人とも秋田を出て行ってしまったので、そうすると親の面倒を見る人が誰もいなくなっちゃうんです。そういった面でも、自分が秋田に戻らなければならないと思ったから、秋田で教師をすることを決めました。



―どんな教師になりたいですか。


教えるということで言うと、常に更新できる教師になりたいですね。新しいやり方、教授法、アプローチを持ちながら生徒に一番良い教育を提供したい。


生活面で言うと、生徒にとってモチベーションが上がる先生がいいですね。一緒にいて楽しいとか、相談したらとても気分が良くなるとか、生徒の感情面を上向かせる存在でいたい。教師は行動を制限してしまうことが多いんですが、そういうのじゃなくてこうしようとかああしようとかそういう声かけをしていきたいと思っています。


こういう声かけは、自分があれするなこれするなと言われるのがすごく嫌なので、そう言われて嫌になる生徒の気持ちがよくわかるんです。自分がやられて嫌だったことは生徒にしたくない、自分がやられてよかったことをしていきたいですね。




先生の生徒、教育について


―都会に住む生徒と瀬尾先生の生徒には、機会の差があると思いますか。


チャンスの差ってことですよね。それはあります。秋田県の高校生は、英語の試験はTOEICのListening & Readingか英検しか受けられないんです。そういった面で、学習の機会が少ないと思います。あと、人が少ないから、他の生徒から受ける刺激が、やっぱり少ないのかなって思うんですよ。自分の周りの生徒と比べて、自分はどうかっていう観点で生徒はものを見てるんです。都会はいろんな生徒がいて、優秀な生徒から良い影響を受けることができるんですが、秋田は周りにはそんなにいない。だから、自分より下の子たちをみて判断してしまうので、都会の子と比べると刺激が足りないのかなって思いますね。



―なるほど。そういった刺激不足、都会との差などをどうカバーしようと考えていますか。


常に話しているのは、隣の子と比べるなと言っていますね。自分の周りの子供たちと比べてもしょうがない。もっと視野を広げて、全国の高校生とか、広いところを見て欲しいと話しています。あとは、セミナーとかの話が出た時は積極的に参加するように勧めています。学校だけじゃなくて、学校以外からの刺激は受けさせようとは思っています。


―英語は必要だと思われますか。


今、ソーシャルネットワーキングサービスで誰でも自分の意見を言える時代じゃないですか。違う言語を話している人とコミュニケーションを取るのが当たり前になっているんですよ。例えば、韓国語を喋る人とどうコミュニケーションを取るかっていうと、英語ですよね。英語は、意思疎通をとる一つのツールなんですよ。こういう話をすると、秋田の学生からは「秋田には外国人いなくね?」と言われるんですけど、秋田は人口減少しているので、将来、ビジネスのお客さんがいなくなるんですよ。となると、会社が生き残るためには、海外に売らなければならないんですよね。そのための英語です。職業のためにも必須になってくる。



―どうして高校の先生になりましたか。高校は小学、中学と比べて何が違いますか。


中学校の免許も持っているので、中高で悩んだんですが、あまりこれと言った理由はないですね。強いて言えば、ある程度の英語力を生かせるのは高校だと思ったんですね。中学校の授業だと本当に基本的なことしか教えられない。コミュニケーションを取る手前のことを教えなければならないのかなと思って。それで高校の方が、自分の英語力を生かせるし、あとは生徒自身のその後の人生に一番影響のある時期だと思うので、そういう生徒と一緒にいたいなと思ったからですね。



―高校生にこういう人間になって欲しいというビジョンはありますか。


自分の担任している生徒には人の役にたつ人間になって欲しいとは、いつも言っています。自分のことばかりじゃなく、人が嫌がることをするのが仕事と言っています。人が自分にはできないことをすることが仕事だと。職業というのは社会貢献の手段の一つでしかないんです。職に就くのがゴールじゃなくて、その後、どう社会貢献するかがゴール。そういうことは言っていますね。



―社会貢献がゴールだとお考えの理由はありますか。


これは、自分の同期の先生から聞いたものなんですよ。その先生が、社会人経験のある先生で、ある技術会社で勤めて、途中でやめて教師になったんです。その先生が生徒に、社会人講話として話してたときに自分が耳にした内容なんですよ。その技術会社で言われたのは、新人研修のときに、「与えられたことをこなすのではなく、他の人ができないことをするのが仕事です。皆さんは皆さんにしかできない社会貢献を考えながら仕事をしてください」と言われたらしいんです。


それまで自分も大学に入って職業を手にするのが最終目標だったんですけど、そうすると就いた後成長しないなって。その先の目的をもって、例えば社会貢献ですけど、職業を手段にすれば、もっと成長できるなと思ってます。


どうしても高校の先生は就職とか大学進学が目標になるんですよ。でも大学に入れることが目標で、その後は自分でなんとかしてくださいっていうのは無責任では?と思いますね。大学に入って何を学びたいのかがないと、入って終わり。それと同じで、職業につくことを目標にすると、そこで終わってしまう。そうじゃなくて、大学に入った後、職業に就いた後、もっと成長して欲しいと思っています。

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